日  時 平成29年8月24日(木)~27日(日)
参加者 佐々木克 佐々木比 橋詰 後藤

〔行動記録〕
24日(木)晴後曇  6:45伊奈川ダム―六合目吊り橋―仙人の泉―義仲の力水―14:00木曽殿山荘
25日(金)風霧雨  5:30木曽殿山荘―空木岳―南駒ヶ岳―仙涯嶺―越百山―12:15越百小屋
26日(土)雨後晴  4:35越百小屋―越百山―奥念丈山―袴腰山―浦川山―安平路山ー17:30安平路避難小屋
27日(日)晴時々曇4:20安平路避難小屋―白ビソ山―摺古木山―摺古木自然園P―10:30大平宿=帰広

「岳人」2003年7月号 特集 夏山、縦走登山のススメより
~ヤブの稜線から3000mの稜線へ~◎中ア・摺古木山~越百山~木曽駒ヶ岳縦走

「・・・越百山から南部の縦走がポイントとなる。越百山から南部の山はかつてほとんど頂稜部まで伐採されたため,一面クマザサに覆われている。南越百山から安平路山間はここ30年ほどほとんど手が入っていない・・・登山道がいわゆる整備されない,笹刈りも行っていない山域なので地図とコンパス、ツェルト,丈夫な雨具,などきちんと準備できるパーティーにはたまらないコースである・・・」

この記事の前年、木曽駒ヶ岳から空木を雨の中縦走した。ガスの中,空木岳山頂から南に消える登山道の先はどうなっているのかと見送った。その縦走路の記事であり、大平宿までの中央アルプス完全縦走である。針葉樹豊かな低山から、岩稜の高山帯への変化も興味深い。心引かれるものがあったが,機会なく10年以上経った。
昨年からこのルートへの興味が再燃し,賛同してくれる仲間もいて,今回,まだ歩いていない空木岳より南部を計画した。

〔行動過程〕
1日目:伊奈川ダムから入山。長時間の林道歩きは退屈だが,寝不足の体には,丁度いい慣らしになる。吊り橋を渡った6合目からは,急登になり,つかの間の晴れ間と遠景を眺めつつ,ゆっくり登る。
入山前から天気予報はよくない。山荘に着く頃はガスで展望はない。
夕日の前にガスが奇跡的に途切れ,下界の明かりや明日行く稜線がみえた。明日の予報は毎時0mmの雨だが,風速17m予想。ふき飛ばされることはないが,それなりの覚悟がいる。

2日目:予報通りガスとそれなりの風。予定を切り上げて下山する人もいる。縦走路は西側にあり常に西風を受け続ける。木曽殿越は風が集まるところで空木岳の登りでは,時々足をとられる。山頂につくと少し風が弱く感じられ,予定どおり縦走することにする。
白い花崗岩に映えるハイマツの緑・・・縦走路の僅かにみえる起伏を頭の中で景色に膨らませながら歩く。何人かに追い越され,越百からのツアーとすれ違う。人と出会うと安心する。
先が見えないと山頂標識は突然現れる。着いたかと思えばまだ先で,まだかと思うと,最後の越百山に着く。写真撮影も早々に越百小屋に向けて下る。

今日はどのピークも白一色の世界である。
小屋に着くと雨が本降りになる。
越百小屋の主人は,素朴な山やだ。「安平路山への路はある。山慣れた者なら分かる。地図の勉強は必要・・・」至極最もである。「この間も安平路山まで小学生の孫と9時間で往復した・・・」しかし個性豊かである。
宿泊客は10名。ここまでくる人たちは皆山歴が興味深い。
明日の天気予報は午前中雨午後曇後晴。

3日目:雨が降っているが回復の期待を込めて出発。越百山山頂から南の縦走路を見るも道は直ぐガスの中に消えている。しかし、雨は弱まりつつある。コンパスをあて,南下を開始する。

南越百山まではハイマツが被っているが足下ははっきりしている。ハイマツの踏み跡からクマザサ帯に入ると不明瞭になってくる。

 

 

 

 

僅かな笹のくぼみと足下の感触で進む。時折,変色したテープが出てくる。下りでは倒れた笹で踏み跡が分からない。笹は濡れていなくても滑る。濡れたらなおさらである。2歩進むと転ぶという有様である。

広い尾根、晴れていれば何でもないコルへの下りも先が見えないと,谷に降りないように気を使い,足が止まりがちになる。登りになると足下を確認する為、笹をかき分けつつ進む。失敗すると足に笹の枝が絡みつき,行くなと引っ張る。いつもより足を高く上げる。笹のラッセルである。トラバースになると笹が倒れるため,進みづらさが増す。

そんなササこぎの要領を実地で体験しつつ,奥念丈岳に着く。印の白い棒と念丈岳に続く笹はらいされた高速道のような縦走路が左側に下っている。

 

 

 

 

 

 

この頃から天気が回復し,展望が得られるようになる。たおやかな笹の稜線と遙か向こうに袴腰山がみえ,浦川山が控える。稜線を外しやすい手前でガスが晴れたのは幸運である。思わず笑顔になる。
上手くいけば変色したテープが見つかる。テープの近くは踏み跡が少しはっきりする。ポイントには,文字の消えた木の矢印が打ち付けてある。浦川山の登りの笹は背丈を超えるが,先人の残した遺物に助けられつつ,ひたすらササをこぐ。時に先頭を交代してもらい、仲間のパワーと地形の読みでスピードアップし、超過時間の増加を抑えつつ,ついに安平路山の最後の登りになる。

 

稜線をそのまま直登する。山頂は笹に囲まれ静かだった。

今日の宿、安平路避難小屋に向う。笹の背丈は高いが、足元の道はしっかりしている。

 

 

 

 

右手に御嶽山、北アルプスの山並み、左手には富士山、南アルプスの山並みが広がる。

小屋の手前の沢で水を汲み、貸し切りの避難小屋に到着する。頭の先から,靴の中までずぶぬれで靴下を絞り、衣服を干す。

一息着く頃クマザサの草原にたつシラビソに夕日が落ちる。
この安堵感と充実感。
この日は縦走路で他に一人も出会うことなく,まさに山深く静寂の縦走だった。
明日の道のりはまだ長い。

 

 

4日目:日の出は白ビソ山でむかえた。朝露に濡れた笹は6月に見た写真より成長して胸までの時もある。
今日はいい天気で御嶽山や恵那山が前方に構えている。南北アルプスの山並みもはっきりみえる。
足元に注意しながら道を行く。

 

 

 

そろそろ飽きたころに最後のピーク摺古木山に着く。

 

 

 

 

 

 

相も変わらず笹の道を下る。この頃から、軽荷で登ってくる登山者に出会う。早朝出発の安平路山への日帰りだろう。
摺古木山自然園駐車場からは,未舗装のダート道をのんびり(疲れて)歩く。今朝まで歩いた山々がどんどん高く遠くなる。渓谷沿いの林道は日差しがまぶしい。木陰には蝶が舞い水音が涼しい。3時間前とは別世界である。
古の宿場町大平宿までたどり着く。山中に開かれた宿場風景を眺めつつ,この4日間を回想しつつ(眠りつつ)帰路についた。

帰宅後の一番の土産は洗ってもとれない青笹の香りだった。